第15回エシカルインタビュー <みんなでつくったかすみがうらの梨ピューレ(かすみがうら市)>

茨城県内のエシカルな取組を紹介する「エシカルインタビュー」。
今回は、かすみがうら市を訪ね、「みんなでつくったかすみがうらの梨ピューレ」についてお話をうかがいました。
一年を通してさまざまな果樹栽培が盛んなかすみがうら市では、規格外果物のフードロス削減として、「かすみがうらフードロス削減プロジェクト」に取り組んでいます。

「みんなでつくったかすみがうらの梨ピューレ」の背景について

かすみがうら市では、夏のブルーベリー、秋のぶどうや梨、栗、柿、そして冬のいちごと年間を通じて多種多様な果物が栽培されています。
しかし、その一方、多くの規格外の果物が廃棄されていることが課題でした。
そこで、この課題を解決するため、市では令和4年(2022年)から「かすみがうらフードロス削減プロジェクト」に取り組んでいます。

その第1弾として行われたのが、ブルーベリーを対象とした「かすみがうら未収穫果樹再生プロジェクト」。人手不足で収穫しきれずに廃棄されてしまうブルーベリーを収穫し、新商品を開発するモデル事業で、生産者と飲食店等企業、筑波大、そして市の産学官連携で実施されました。

「みんなでつくったかすみがうらの梨ピューレ」は、この「かすみがうらフードロス削減プロジェクト」の第2弾として令和5年(2023年)に開発された商品です。規格外品として廃棄されてしまう梨を、そのみずみずしさと芳醇な甘さをいかしてピューレにしました。

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市内中学校3校合作のパッケージデザインがみずみずしい
「みんなでつくったかすみがうらの梨ピューレ」

「みんなでつくった」かすみがうらの梨ピューレ

第2弾となった「みんなでつくったかすみがうら梨ピューレプロジェクト」は、前回にも増して多彩な協力者が顔を揃えました。それが「みんなでつくった」という商品名にも表れています。

まず、原材料となる梨については、JA水郷つくばのかすみがうら市内支店、千代田果樹観光協会の協力で、市内の梨農家約50件が賛同し、約1.3トンもの規格外の梨「豊水」が集められました。豊水は「みつ症」といって、果肉の一部が透き通って柔らかくなる障害がおこりやすく、廃棄しなければならないものが全体の1割程度もあるそうです。
次に梨の配送ですが、市内の建設資材卸会社が協力し、既存の配送ルートを活用してピューレ製造工場に運びました。これにより配送コストを大幅に抑えることができたばかりか、全体として二酸化炭素の排出を抑えることがき、よりサスティナブルな商品とすることができました。
製造は、都内で開催された食品開発展で出会った千葉県の企業が協力。無添加で製造し、特産の梨の風味はそのままにピューレ化しました。

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丹精込めて栽培しても1割程度の規格外品が出てしまう

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令和5年(2023年)11月9日(木)に開かれた、「みんなでつくったかすみがうらの梨ピューレ」完成お披露目会

どんなに良い商品を作っても「販売」まで考えなければ、事業として続けることは難しいものです。
消費者が買いたいと思う商品パッケージの制作は、市内に3校ある中学校の美術部員たちが筑波大生の指導のもとで完成させました。個性豊かな6枚のイラストを組み合わせた3校合作のラベルです。
商品は、ふるさと納税返礼品のほか、地域おこし協力隊やキッチンカー事業者の協力を得て、一般の消費者のもとへと届けられました。

「中学生や大学生など若い人たちが関わってくれることで、フードロスだけでなく地域農業が抱える課題にも目が向き、新たな解決策が生まれてくるのではないかと期待しています」と、かすみがうら市 産業経済部 地域未来投資推進課の石川将己さん。
多くの、さまざまな立場の人々の協力を得られたことで成功につながりました。みんなで作り、みんなが活力を得ることで、プロジェクトは続いていきます。

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パッケージデザインに使用したイラストを作成した市内中学校の美術部員の皆さん

今後の展望について

「梨ピューレ」は今後、県内企業に製造元が変わり、業務用での販売に一本化するとのこと。これからも市内飲食店やキッチンカーのメニューで楽しむことができます。
「キッチンカーとカフェで梨ピューレを使ってくれている若い事業者さんが、梨のフードロスの輪を全国に広げたいと、クラウドファンディングに挑戦してくれました。目標金額を達成し、注目の高さがうかがえます。梨ピューレを使った新しいメニューも次々と考えてくれています。ぜひお試しください」と、同課の君﨑恵一さん。

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キッチンカーでは梨ピューレをつかったドリンクからフードまで多彩なメニューが提供される

最後に、プロジェクトの第3弾、第4弾について、お話をうかがいました。
「かすみがうら市の果樹は多彩で、しかも果樹に含まれるポリフェノールの効用なども大きな可能性を秘めています。今はまだアイデアの段階ですが、次のプロジェクトを考えていますので、ぜひ楽しみにしてください。
ただ、目的は規格外品として廃棄されてしまう生産物を減らし、農家の皆さんを支援することです。新商品開発のために規格外品を求めるというのは本末転倒になってしまいます。生産者、加工業者、飲食店、消費者、そして環境にとってより良い仕組みを作れるよう、これからも地域課題に向き合っていきたいと思います」と、石川さん。

今後のかすみがうら市から目が離せません。

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かすみがうら市地域未来投資推進課の石川将己課長補佐(左)と君﨑恵一係長(右)、かすみがうら市公式キャラクター「かすみがうにゃ」(中央)

●かすみがうら市 地域未来投資推進課(霞ヶ浦庁舎)
アクセス 茨城県かすみがうら市大和田562
電話番号 029-897-1111
HP(市役所HP内 梨ピューレプロジェクト) https://www.city.kasumigaura.lg.jp/page/page016320.html
※キッチンカー等の出店情報はこちら(https://www.instagram.com/kasumi_laugh/