第18回エシカルインタビュー<勝田環境グループ(ひたちなか市)>

茨城県内のエシカルな取り組みを紹介する「エシカルインタビュー」。
今回は、木屑処理から生じた副産物の堆肥化や、その堆肥により生産されたオーガニック農産物の販売により、「廃棄物を価値ある資源へと転換する」独自の循環型ビジネスモデルを実践している勝田環境グループを訪ねました。
実際に木屑処理や堆肥熟成の現場を見学し、生産された米「福米」を試食した、エシカルな取り組みの「体感」レポートです。

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廃棄物を価値ある資源へと転換する取り組みについて、工場の流れを示しながら事業への想いを語る望月会長。

廃棄物を資源化する循環型事業について

勝田環境グループでは、一般および産業廃棄物として持ち込まれた木屑を、焼却処理するのではなく、価値ある資源として余すところなく活用しています。
持ち込まれた木屑は、破砕機でチップにされ、自社バイオマス発電所の燃料として利用されます。
発電は「循環流動層ボイラー」という高効率な方式で行われ、発電量は一般家庭1万軒分相当となります。発電された電気は売電され、収益の一部を担っています。

一方、この木屑の破砕の際に生じる「おがくず」のような細かい粉や、伐採された生木に含まれる土砂は、燃料には不向きのため、有効活用するために考案されたのが堆肥化事業です。

堆肥の主原料となる木屑の粉は、それだけでは堆肥にはなりません。そこで、鶏糞と籾殻が加えられています。鶏糞は発酵を促し、籾殻は土壌を柔らかくしてくれます。
現在は、鶏卵の生産量が日本トップレベルである茨城県の地域特性を活かし、乾燥させた良質な鶏糞を安定的に使用することで、高品質な堆肥の生産サイクルを確立しています。

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運び込まれた伐採木や建築廃材等は5cm以下に破砕され、燃料用の木質チップに。案内は勝田環境株式会社 営業部営業課 部長 阿部幸司さん。

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(左)建築廃材に含まれる釘などの金属類は複数箇所に置かれた磁力選別機で除去されます。
(右)燃料にならない「おがくず」と土砂は、堆肥原料となります。

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1万軒分もの発電量を誇るバイオマス発電所。

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(左)「おがくず」、鶏糞、籾殻、干し芋の加工残渣を混ぜて堆肥化。発酵を促進するために半月に一度、巨大な攪拌機で混ぜ返し、酸素を供給します。
発酵が進むと堆肥の中の温度は70度にもなり、攪拌すると湯気が立ち上ります。
(右)干し芋の加工残渣を使ったコンポスターも稼働中。完成した堆肥はサラサラとした土のようになります。

農業への展開とオーガニック栽培

いくら高品質の堆肥を作ってもそれを使うところがなければ、事業として成り立ちません。そこで、同グループでは2019年に農業法人を設立し、農業へ参入することで、堆肥の安定的な活用先を自ら創出しました。

この事業では、化学肥料を一切使用せず、自社製堆肥のみで米や枝豆、ほうれん草などを栽培する有機農法を実践しています。特に「福米」と名付けられた米は、その食味で高い評価を得ているとのこと。「時間をかけて土壌から栄養を吸収させるため、作物の味は格別ですよ」と望月福男会長も太鼓判を押します。福米を試食したところ、丸々とした大きめの粒で、しっかりとした食感は、噛むほどに満足感が得られます。

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レストラン「ななかまど」では、勝田環境グループ生まれの「福米」やほうれん草などオーガニック食材を楽しめます。

農業へ参入した当初は、「素人にできるはずがない」と厳しい批判もありましたが、試行錯誤の末、安定した栽培技術を確立し、今では農家から堆肥の提供を求められるまでになりました。
「水が飲みたい?欲しい栄養は何?と作物と対話するようにゆっくり丁寧に携われることに農業の面白さを感じています」と望月会長は語っていました。

同グループの「福米」や野菜は、レストラン「ななかまど」で楽しむことができます。こちらは10年ほど前に、地域の区長からの強い要望を受け、廃業したレストランを社員食堂兼レストランとして再生させた店舗です。

また、レストラン隣の建屋では、バイオマス発電所でタービンを回した後の蒸気を活用して芋を蒸し、干し芋の生産も行っています。通常は灯油を燃やし、ボイラーで蒸気を作りますが、ここではいわば「蒸気のリサイクル」をしています。環境にもやさしい干し芋です。近年では自社栽培の餅米も蒸し、「のし餅」にしているとか。

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蒸したての状態で皮を剥きます。色良く仕上げるには厚く皮を剥くため、廃棄量も多くなり、加工残渣の活用が生産地全体の課題となっています。

さらに、農業事業は社会貢献活動にもつながっています。
同グループでは「農福連携」の一環として、法務省などと連携し、刑務所から仮釈放となった者に対し、農業訓練を実施して社会復帰を支援する取組みを実施しています。こういった成人の農業訓練校は全国に1校しかなく、全国的にも珍しい試みで、開始当初は苦労の連続だったようですが、これまで3名の訓練修了者が正社員となるなど、同グループが罪を償った者が社会から孤立しないよう、その再出発を支える場となっています。
会長は、「AIの時代であっても事業の根幹を担うのは人間です。訓練を受けた者が『農業を続けたい』と夢を語ってくれたときは嬉しかった」と目を細めました。

将来の展望について

同グループでは、廃棄物を燃料や堆肥に変えてエネルギーや食物を生み出す循環の輪を形作っていますが、この循環型ビジネスをさらに進化させるため、新しい構想を描いているとのことです。

「干し芋を使った新しいスイーツを商品開発したいと思っています。また、自社農産物を活用した『オーガニック食堂』や、一般消費者向けの『直売所』も展開したいと思っていますが、現在は生産が追いつかないため、段階的な実現を目指していきたいです」と語る望月徹男社長の頭には、アイデアがあふれています。

「人と自然への思いやりを大切に」をスローガンとする同社。通常なら「当たり前」と思って捨てていたゴミや余りを生かしきる姿勢に、モノに対する「思いやり」を感じる取材となりました。

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レストラン「ななかまど」の前で気さくにポーズに応じてくれる望月会長。

●勝田環境株式会社
アクセス 茨城県ひたちなか市津田2554番地2
電話番号 029-272-2141(代表)
ホームページ https://www.katsukan.com/